七 一 けんをふむと云事
原文
- `剣をふむ
- `と云心は兵法に専ら用る儀也
- `先大きなる兵法にしては弓鉄砲に於ても敵我方へ打かけ何事にてもしかくる時敵の弓鉄砲にてもはなちかけて其あとにかかるによつて又弓をつかひ又鉄砲に薬をこみてかかりこむ時こみ入かたし
- `弓鉄砲にても敵のはなつ内にはやくかかる心也
- `早くかかれば矢もつがひがたし
- `鉄砲も打得ざる心也
- `物毎を敵のしかくると其儘其利を受て敵のする事を踏付て勝心也
- `又一分の兵法も敵の打出す太刀のあとへ打てば
- `とたんとたん
- `となりてはかゆかざる所也
- `敵の打出す太刀は足にてふみ付る心にして打出す所をうち二度目を敵の打得ざる様にすべし
- `踏
- `と云は足には限るべからず
- `身にてもふみ心にてもふみ勿論太刀にてもふみ付て二度目を敵に能させざる様に心得べし
- `是則物毎の先の心也
- `敵と一度にといひてゆきあたる心にてはなし
- `其儘あとに付心也
- `能々吟味有べし