九 一 敵になると云事
原文
- `敵になる
- `と云は
- `我身を敵になり替て思ふべきと云所也
- `世の中を見るにぬすみなどして家の内へ取籠る様なるものをも敵を強く思なすもの也
- `敵になりて思へば世の中の人を皆相手としにげこみてせんかたなき心也
- `取籠るものは雉子也
- `打果しに入る人は鷹也
- `能々工夫有べし
- `大きなる兵法にしても敵といへば強く思ひて大事にかくるもの也
- `よき人数をもち兵法の道理を能知り敵に勝と云所を能うけては気遣すべき道に非ず
- `一分の兵法も敵になりて思ふべし
- `兵法能心得て道理強く其道達者なるものに於ては必ず
- `まくる
- `と思ふ所也
- `能々吟味すべし