原文 `陰を動かす `と云は `敵の心の見えわかぬ時の事也 `大分の兵法にしても何共敵の位の見わけざる時は我かたより強くしかくる様に見せて敵の手だてを見るもの也 `手だてを見ては各別の利にて勝事やすき所也 `又一分の兵法にしても敵うしろに太刀を構へ脇に構へたる様なる時は `ふつ `と打んとすれば敵思ふ心を太刀に顕す物也 `顕れ知るるに於ては其儘利をうけて慥に勝を知るべきもの也 `油断すれば拍子はぬくるもの也 `能々吟味有べし