原文
- `他の兵法の流々を書付
- `風の巻
- `として此巻に顕す所也
- `他流の道を知らずしては我一流の道慥に弁へがたく他の兵法を尋見るに大きなる太刀をとつて強き事を専らにして其わざをなすながれ有
- `或は小太刀と云ひて短き太刀を以て道を勤るながれ有
- `或は太刀かず多くくみ太刀の構を以て
- `おもて
- `と云ひ
- `奥
- `として道をつたふる流も有
- `是皆実の道に非る事此巻の奥に慥に書顕し善悪理非を知らする也
- `我一流の道理各別の儀也
- `他の流芸にわたつて身すぎの為にして色をかざり花をさかせうりものにこしらへたるによつて実の道に非る事歟
- `亦世の中の兵法剣術斗にちひさく見たてて太刀をふり習ひ身をきかせて手のかるる所を以て勝事を弁へたるものか何れも慥なる道に非ず
- `他流の不足成所一々此書に書顕す也
- `能々吟味して二刀一流の利を弁ふべきもの也