五 一 他流に太刀かず多き事
原文
- `太刀の数余多にして人に伝ふる事道をうり物にしたてて太刀数多くしりたるを初心のものに深く思はせん為成べし
- `兵法に嫌ふ心也
- `其故は
- `人をきる事色々ある
- `と思ふ所まよふ心也
- `世の中に於て人をきる事替る道なし
- `知る者も知らざる者も女童子も打たたききると云道は多くなき所也
- `若かはりては
- `つくぞ
- `なぐぞ
- `と云外はなし
- `先きる所の道なれば数の多かるべき子細にあらず
- `され共場により道に随ひ上わきなどのつまりたる所などいはば太刀のつかへざるやうに持道なれば
- `五方
- `とて五ツの数は有べきもの也
- `夫より外にとりつけて手をねぢ身をひねりて飛ひらき人をきる事実の道に非ず
- `人をきるにねぢてきられずひねりてきられず飛てきられずひらいてきれずかつて役に立ざる事也
- `我兵法に於ては身なりも心も直にして敵をひずませゆがませて敵の心のねぢひねる所を勝事肝心也
- `能々吟味有べし