七 一 他流に目付と云事
原文
- `目付
- `と云ひて其流により敵の太刀に目を付るも有又は手に目を付る流も有
- `或は顔に目を付或は足などに目を付るも有
- `其ごとくとりわけて目を付んとしてはまぎるる心有て兵法のやまひといふ物になるなり
- `其子細は鞠をける人は鞠に能目を付ね共びんずりをけおひまりをしながしてもけまはりてもける事
- `物になるると云所あれば慥に目に見るに及ばず
- `又はうかなどするもののわざにも其道になれては戸びらを鼻にたて刀を幾腰もたまなどにとる事
- `是皆慥に目付とはなけれ共不㆑断手にふれぬればおのづから見ゆる所也
- `兵法の道に於ても其敵其敵としなれ人の心の軽重を覚え道を行得ては太刀の遠近遅速迄も皆見ゆる儀也
- `兵法の目付は大形其人の心に付たる眼也
- `大分の兵法に至ても其敵の人数の位に付たる眼也
- `観
- `見
- `二ツの見やう観の目つよくして敵の心を見其場の位を見大きに目を付て其戦のけいきを見其折ふしの強弱を見てまさしく勝事を得る事専也
- `大小兵法に於てちひさく目を付る事なし
- `前にもしるす如く濃にちひさく目を付るによつて大きなる事をとりわすれまよふ心出きて慥なる勝をぬかすもの也
- `此利能々吟味して鍛錬有べき也