一一後書

原文

  1. `右他流の兵法を九ケ条として
  2. `の巻
  3. `有増書付る所一々流々口より奥に至るまでさだかに書顕すべき事なれ共わざと
  4. `何流の何の大事
  5. `共名を書しるさず
  6. `其故は一流一流の見たて其道其道のいひわけ人により心に任せてそれぞれの存分有ものなれば同じ流にも少々の替るものなれば後々までの為に
  7. `ながれ筋
  8. `共書のせず
  9. `他流の大体九ツに云分て世の中の道人の直なる道理より見ば長さにかたつき短きをにし強き弱きもかたつきあらきこまかなると云事も皆へんなる道なれば
  10. `他流の口奥
  11. `と顕はさず共皆人の知るべき儀也
  1. `我一流に於て太刀に奥口なし
  2. `構に極りなし
  3. `唯心を以て其徳を弁ふる事是兵法の肝心也
  4. `正保二年五月十二目  新免武蔵
  5. `寺尾孫之丞殿
  6. `寛文七年二月五日  寺尾夢世勝延 花押
  7. `山本源介殿