一四 一 有構無構の数の事

現代語訳

  1. `構無というのは、太刀を構えるということで、あるべきことではない
  2. `しかし、五方すなわち上段、中段、下段、左脇、右脇太刀を置くこともあるので、構えともなろう
  3. `太刀は、敵の出方により、所により、景気にしたがい、いずれの方に置こうとも、その敵を斬りよいように持つ感覚である
  4. `上段も時にしたがい少し下がり気味になるため中段となり、中段を利を得るのに少し上げれば上段となる
  5. `下段も折に触れ少し上げれば中段となる
  6. `両脇の構えも形勢により少し中央へ出せば中段・下段ともなる感覚である
  7. `したがって
  8. `構えは有って、構えは無き
  9. `という理である
  1. `まず
  2. `太刀を取ったからにはいかにしてでも敵を斬る
  3. `という心である
  4. `もし敵の斬りかかる太刀を、受ける、張る、当たる、粘る、触る、などということがあっても、みなみな敵を斬る機縁であると心得るべし
  5. `受ける
  6. `と思い
  7. `張る
  8. `と思い
  9. `当たる
  10. `と思い
  11. `粘る
  12. `と思い
  13. `触る
  14. `と思うことによって、斬る際に短所が出てこよう
  15. `何事も斬る機縁
  16. `と思うことが肝要である
  17. `よくよく吟味すべし
  1. `兵法が大分にあっては、人数立てすなわち隊の配置というのも構えである
  2. `みな合戦に勝つ機縁である
  3. `居着くすなわち固着するというのはまずい
  4. `よくよく工夫すべし