一 敵になるという事

現代語訳

  1. `敵になる
  2. `というのは
  3. `己が敵に成り代わったつもりで思考すべきということである
  4. `世の中を見るに、盗みなどして家の内へ立籠るような者をも、その敵を強いと思い込むものである
  5. `敵になって思えば、世の中の人を皆相手とし、逃げ込んで、抜き差しならぬ心である
  6. `立籠る者は雉子である
  7. `打ち果たしに入る人は鷹である
  8. `よくよく工夫あるべし
  9. `大分の兵法にあっても、敵といえば強く思って大事にしてかかるものである
  1. `優れた隊を持ち、兵法の道理をよく知り、敵に勝つというところをよく捉えて後は気遣いする必要はない
  2. `一分の兵法でも敵の身になって思うべし
  3. `兵法をよく心得て、道理も強く、その道に達者な者であれば、必ず
  4. `負ける
  5. `と思うところである
  6. `よくよく吟味すべし