一三 一 うつらかすという事
現代語訳
- `うつらかす
- `というのは
- `物毎にあるものである
- `あるいは眠りなどもうつり、あるいは欠伸などもうつるものである
- `時がうつるというのもある
- `大分の兵法にあっては、敵がうわついて事を急ぐ心の見えるときは、少しもそれに構わぬようにして、いかにもゆるりとなって見せれば、敵も我が事のように受けてその気分になり、弛むものである
- `その
- `うつった
- `と思ったとき、こちらから空の心にして、はやく強く仕掛けて勝利を得るものである
- `一分の兵法にあっても、己の身も心もゆるりとして、敵の弛みの間を捉えて、強くはやく先に仕掛けて勝つのが専一である
- `また
- `よわせる
- `といって、これに似ていることがある
- `一つは、無気力の心
- `一つは、浮かれる心
- `一つは、弱くなる心
- `よくよく工夫あるべし