三 一 他流において強みの太刀という事
現代語訳
- `太刀に
- `強い太刀
- `弱い太刀
- `ということのあるはずがない
- `強い心で振る太刀は荒いものである
- `荒いばかりでは勝ち難い
- `また
- `強い太刀
- `といって、人を斬るときにあって無理に強く斬ろうとすれば、斬れぬのである
- `試し物などを斬るのにも、強く斬ろうとするのはまずい
- `誰においても、敵と斬り合うとき
- `弱く斬ろう
- `強く斬ろう
- `と思う者はいない
- `ただ人を
- `斬り殺そう
- `と思うときは、強い心もなく、もちろん弱い心でもなく
- `敵が死ぬほど
- `と思うだけである
- `また、強みの太刀で人の太刀を強く張れば、張り過ぎて、必ずまずい感じになる
- `人の太刀に強く当たれば己の太刀も折れ砕けるところである
- `したがって、強みの太刀などどいうものはないのである
- `大分の兵法にあっても、強い隊を持ち、合戦において
- `強く勝とう
- `と思えば、敵も強い人を持ち、戦も
- `強くしよう
- `と思う
- `それはどちらも同じことである
- `何事にも勝つ、ということであるが、道理なくしては勝つことはできない
- `我が兵法の道においては、少しも無理なことを思わず、兵法の知力を以ていかようにも勝つところを得るのである
- `よくよく工夫あるべし