八 一 他流に足使いのある事
現代語訳
- `足の踏み方に
- `浮足
- `飛足
- `跳ねる足
- `踏みつめる足
- `からす足
- `などといって色々早足を踏むすなわち軽快な足捌きをすることあり、これみな我が兵法から見れば短所に思うところである
- `浮足を嫌うこと
- `そのわけであるが、戦になれば必ず足は浮きがちになるものであるから、極力確実に踏むのが正しい道である
- `また、飛足を好まぬこと
- `飛足は、飛ぶ起こりすなわち踏み切るまでの溜めがあって、飛んで居着くすなわち着地直後動けぬ間がある
- `幾飛びも飛ぶという理もない故に飛足はまずい
- `また、跳ね足
- `跳ねるという意識によって捗行かなくなるものである
- `踏みつめる足
- `待ちの足といって、殊に嫌うことである
- `その他、からす足、色々な早足などがある
- `あるいは沼、湿地、あるいは山、川、石原、細道においても敵と斬り合うものであるから、所により飛び跳ねることもならず、早足の踏めぬ所もあるものである
- `我が兵法において、足に変わることはない
- `常の道を歩むが如しである
- `敵の拍子にしたがい、急ぐときや静かなときの体勢をとって、足らず、余らず、足がよろよろせぬようにあるべきである
- `大分の兵法にあっても足を運ぶことは肝要である
- `そのわけは、敵の心を知らず、むやみにはやくかかれば拍子が狂い、勝ち難いものである
- `また、足踏みが悠長では、敵がうろめき合って崩れるといったところを見い出せずに、勝つことを逃がして、はやく勝負がつけられぬものである
- `うろめき崩れる場を見分けて、少しも敵を寛がせぬように勝つことが肝要である
- `よくよく鍛錬あるべし