三一四七八島院宣
原文
- `さるほどに院宣の御使平三左衛門重国御坪召次花方八島へ参り院宣を取り出だいて奉る
- `大臣殿以下の卿相雲客寄り合ひ給ひてこの院宣を開かれけり
- ``一人聖体出㆓北闕宮禁㆒幸㆓諸州㆒三種神器埋㆓南海四国㆒経㆓数年㆒尤朝家之嘆亡国之基也
- ``抑彼重衡卿東大寺焼失之逆臣也
- ``須任㆓頼朝朝臣申請旨㆒雖㆑可㆑被㆑行㆓死罪㆒独別㆓親族㆒已成㆓生捕㆒
- ``籠鳥恋㆑雲思遥浮㆓千里南海㆒帰雁失㆑友心定通㆓九重中途㆒乎
- ``然則三種神器於㆑奉㆔返入㆓都㆒彼卿可㆑被㆓寛也㆒
- ``者院宣如㆑此仍執達如㆑件
- ``寿永三年二月十四日,寿永三年二月十四日
- ``大膳大夫成忠承進上
- `前平大納言殿へ
- `とぞ書かれたる
書下し文
一
- ``一人聖体北闕の宮禁を出でて諸州に幸し三種神器南海四国に埋もれて数年を経尤も朝家の嘆き亡国の基なり
- ``抑もかの重衡卿は東大寺焼失の逆臣なり
- ``須く頼朝朝臣申し請くる旨に任せて死罪行はるべしといへども一人親族に別れて既に生捕と成る
- ``籠鳥雲を恋ふる思ひ遥かに千里の南海に浮かび帰雁友を失ふ心定めて九重の中途に通ぜんか
- ``然れば則ち三種神器を都へ還し入れ奉らんに於いてはかの卿を寛せらるべきなり
- ``てへれば院宣かくの如くよつて執達件の如し
- ``寿永三年二月十四日
- ``大膳大夫業忠が承り進上