一四四六金渡
現代語訳
- `また重盛殿は、罪を滅ぼして善を生ずるという志が深かったので
- `我が国では、いかなる大善根をしていても、子孫にいつまでも後世を弔ってもらることは難しい
- `ならば他国で、いかなる善根でもして後世を弔ってもらおう
- `と、安元の頃、九州から妙典という船頭を呼び寄せ、人払いをして対面された
- `金三千五百両を用意させ
- `そちはたいへん正直な者だそうだから、五百両をそちに与える
- `三千両を宋へ持っていって、千両を育王山の僧に贈り、二千両を帝へ献上して、田を育王山へ寄進し、この重盛の後世を弔わせるように
- `と言われた
- `妙典はこれを賜って、万里の波を乗り越えて、宋へ渡った
- `育王山の住職である仏照禅師・徳光にお会いしてこの由を伝えると、たいへん喜ばれたので、その足で千両を育王山の僧に贈り、二千両を帝へ献上し、重盛殿の言葉をそのまま奏聞したところ、帝はたいへん感動され、五百町の田を育王山へ寄進された
- `それゆえ、日本の大臣・平朝臣重盛公が来世浄土に生まれ変われるための祈りが今でも続いているという