原文
- `先づ仕立見ぐるしければさらに見所なし
- `女御更衣などの似事はたやすくその御ふるまひを見ることなければよくよくうかがふべし
- `衣袴の着やうすべてわたくしならず
- `尋ぬべし
- `ただ世の常の女かかりは常に見なるる事なればげにもたやすかるべし
- `ただ衣小袖のいでたちは大方の体よしよしとあるまでなり
- `舞 白拍子または物狂などの女かかり扇にてもあれかざし(花ノエダナンドナリ)にてもあれいかにもいかにも弱々と持ち定めずして持つべし
- `衣袴なんどをも長々と踏みくくみて腰膝はすぐに身はたをやかなるべし
- `貌のもちやう仰向は見目わろく見ゆ
- `俯向はうしろかたちわろし
- `さて頸持も強くもてば女に似ず
- `いかにもいかにも袖のながき物を着て手さきをも見すべからず
- `されば
- `仕立を嗜め
- `とはかかりをよく見せむとなり
- `いづれの物まねなりとも仕立わるくてはよかるべきかなれども殊更女かかり仕立をもて本とす