修羅

原文

  1. `これまた一の物なり
  2. `よくすれどもおもしろき所稀なり
  3. `さのみにはすまじきなり
  4. `但し源平などの名のある人の事を花鳥風月につくりよせて能よければなによりもまたおもしろし
  5. `これ殊に花やかなる所ありたし
  6. `これなる修羅の狂ひはたらきは鬼のふるまひになるなり
  7. `または舞の手にもなるなり
  8. `それも曲舞かかりならばすこし舞かかりの手づかひよろしかるべし
  9. `胡籙をたづさへて打物をもてとす
  10. `その持ちやうつかひやうをよくよくうかがひてその本意をはたらくべし
  11. `相構へて鬼のはたらきまた舞の手になる所を用心すべし