原文

  1. `
  1. `常の批判にも
  2. `れたる
  3. `と申すことあり
  4. `いかやうなるところぞや
  1. `
  1. `これ殊に記すに及ばず
  2. `その風情あらはれまじ
  3. `さりながらまさしくれたる風体はあるものなり
  4. `これもただ花によりての風情なり
  5. `よくよく案じて見るに稽古にもふるまひにも及びがたし
  6. `花をきはめたらば知るべきか
  7. `さればあまねく物まねごとになしとも一方の花をきはめたらん人はれたる所をも知ることあるべし
  1. `ればこの
  2. `れたる
  3. `と申すこと
  4. `
  5. `よりもなほ上の事にも申しつべし
  6. `但し花なくてはれ所無役なり
  7. `されば
  8. `湿りたる
  9. `になるべし
  10. `花のれたらんこそおもしろけれ
  11. `花咲かぬ草木のれたらんはなにかおもしろかるべき
  12. `されば花をきはめんこと一大事なるにそのうへとも申すべきことなればれたる風体返々大事なり
  13. `さるほどににも申しがたし
  1. `古歌にいふ
  2. `うすぎりのまがきの花の朝湿り 秋はゆふべと誰かいひけむ
  3. `かやうなる風体にてやあるべき
  4. `心中にあてて公案すべし