原文

  1. `一 申楽神代のはじまりといふは天照大神天の岩戸にこもり給ひしとき天下とこやみになりしに月神の御子島根見尊をはじめたてまつりて八百万の神達天の香久山にあつまり大神の御心をとらむとて神楽を奏し才男を始め給ふ
  2. `中にも天の鈿女尊すすみ出でて榊の枝にを付けて声をあげほとろ踏みとどろかし神がかりすと謡ひ舞ひかなで給ふ
  3. `その御声ひそかに聞えければ大神岩戸を少し開きたまふ
  4. `国土また明白たり
  5. `神達の御おもしろかりけり
  6. `そのときの御あそび申楽のといふ
  7. `くはしくは口伝にあるべし