現代語訳
- `およそ能を相当きわめた仕手でも老いた姿は体得できぬ人が多い
- `例えば、賤しい物真似の技巧を要する態物などの翁形は大方老々として物腰穏やかならばさしたる大事はない
- `冠、直衣、烏帽子、狩衣などを着した高貴な老人の姿はその人体が気高くなくては賤しく見える
- `相応すなわち相適って和合せぬのである
- `稽古の年功を積んで位が上がらねば似合うものではない
- `また、花がなくては面白味もない
- `およそ老人の立居振舞というものは老いているからと腰膝を屈め身を縮こめると花は失せて古臭く見える
- `ゆえに、面白いところも稀である
- `したがって大方は、なんとも漫ろ気で物腰穏やかに立ち振舞うのがよい
- `とりわけ老人の舞の風合は無上の大事である
- `花はあり且つ年寄と見える公案、これについては詳しい口伝がある
- `習うがよい
- `ただ老木に花の咲くが如し