唐事
現代語訳
- `これはおよそ異質なものであるため、定まった稽古すべき型もない
- `ただ肝要なのは出立ちであろう
- `また、面も、同じ人といえども異国の人の物真似であるから、模様の変わった物を用いて一風異相したような風体にするとよい
- `熟練の仕手に似合うものである
- `懇ろに出立ちを唐様にするより他に手立はない
- `いずれにせよ、音曲も働きも唐様ということはそっくりに似せたところで観客は見知らぬであろうから面白味のない風体であるため、どこかに一模様取り入れればよい
- `この異相をするといったことは仮初ながら諸事に応用の効く公案である
- `何事においても異相するというのは感心できるものでないが、唐様をなんとか似せねばならぬのであるから、常の振舞とは風体を違え、なんとなくでも唐風の情緒が傍目にわかるようにすればそれが唐風ということになる
- `これらは遺風による心得である
- `大方、物真似の条々は以上である
- `この他の細微な事は紙筆に載せ難い
- `しかし、およそこの条々を十分にきわめた人は自ずと細微な事も心得るであろう