現代語訳
- `一 この寿福増長の嗜みをすべきとはいえ、ただ世間の理に呑まれて欲心に耽りでもすればこれが一番の道の廃れる原因となる
- `道のための嗜みには寿福の増長があろう
- `しかし、寿福のための嗜みでは道は必ずや廃れよう
- `道が廃れれば寿福は自ずと消滅する
- `正直に、延命を心がけ
- `これが世のあらゆる徳の妙花を咲かせる要因なのだ
- `と心に刻んで嗜むがよい
- `およそ風姿花伝において、第一の
- `年来稽古
- `から始めてこの条々を記したが、これらは全て己から出た才覚ではない
- `幼少以来亡父の力を得て一人前となってから二十余年の間、目に触れ耳に聞き置いたまま、その遺風を受けて、道のため、家のため、これを記したものであり、私利を計るものではない
- `時に応永九年三月二日、筆を馳せ畢る 世阿 在判