一 冒頭
原文
- `月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也
- `舟の上に生涯をうかべ馬の口とらへて老をむかふる物は日々旅にして旅を栖とす
- `古人も多く旅に死せるあり
- `予もいづれの年よりか片雲の風にさそはれて漂白の思ひやまず海浜にさすらへ去年の秋江上の破屋に蜘の古巣をはらひてやや年も暮春立る霞の空に白川の関こえんとそぞろ神の物につきて心をくるはせ道祖神のまねきにあひて取もの手につかずもも引の破をつづり笠の緒付かへて三里に灸すうるより松島の月先心にかかりて住る方は人に譲り杉風が別墅に移るに
- `草の戸も住替る代ぞひなの家
- `面八句を庵の柱に懸置