仏五左衛門

現代語訳

  1. `三十日、日光山の麓に泊る
  2. `宿の主人の語ることには、
  3. `私の名は仏五左衛門といいます
  4. `何事も正直を宗とするゆえ、人はそう申します、一夜の旅枕もくつろいでお休みください
  5. `と言う
  6. `いかなる仏が穢れた俗世に現れて、こんな僧形の乞食巡礼のごとき者をお助けになるのか
  7. `と、主人の振舞いを気に留めて見ていると、ただ無知無分別な正直一筋の者であった
  8. `剛毅木訥は仁に近しという論語の例えのような人物、その生来の廉潔は深く尊ばねばならない