六 日光
現代語訳
- `四月一日、日光山に参拝する
- `その昔、この御山を
- `二荒山
- `と書いたのを、勝道上人が延暦年間に開山した折、
- `日光
- `と改められた
- `千年後の未来を予見なさっていたのだろうか
- `今、この徳川家康公を祀る東照宮の御光は一天に輝いて、恩沢はあまねく溢れ、人民安堵の暮らしは平穏である
- `なお、はばかることが多いので、筆を置いた
- `あら尊と 青葉若葉の 日の光
- `名も知れぬ万葉の人の歌ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下露に 濡れにけるかもなどに詠まれた黒髪山は、霞がかかって雪がまだ白く残っている
- `剃り捨てて 黒髪山に 衣更
- `曾良
- `曾良は、姓は河合、名は惣五郎という
- `芭蕉庵の近くに家があり、私の家事を手伝ってくれていた
- `この度、松島・象潟を眺めに共に行けることを喜び、同時に、旅の苦労をいたわってくれようと、旅立ちの朝、髪を剃って墨染の僧衣に姿を変え、
- `惣五
- `を改めて
- `宗悟
- `とした
- `それゆえ、黒髪山の句がある
- `衣更
- `の二字には力強さを感じる
- `二十町余り登ると滝があった
- `岩洞の頂から飛流し、百尺千岩の深碧の淵に落ちている
- `岩窟に身を潜めて入り、滝の裏から見ることから、
- `裏見の滝
- `と言い伝えられている
- `しばらくは 滝に籠もるや 夏の初め