九 雲巌寺
現代語訳
- `この下野国黒羽・雲岩寺の奥に、我が禅師・仏頂和尚の山居の跡がある
- `縦横の 五尺に足らぬ 草の庵 結ぶも悔し 雨なかりせば
- `と松の炭で岩に書きつけましてな
- `と、いつであったか仰っていた
- `その跡を見ようと雲岩寺へ杖つき向かえば、人々は進んで誘い合い、若い人も多く、道すがら賑やかだったので、気づかぬうちにその麓に着いていた
- `山は奥深い雰囲気で、谷沿いの道は遥かに延び、松や杉は黒く苔生して、四月の空は今なお寒々としていた
- `雲巌寺の十景が尽きる所に架かる橋を渡って山門に入る
- `さて、かの跡はどのあたりだろうか
- `と、後ろの山によじ登れば、岩の上の小さな庵が岩窟にもたれるように結ばれていた
- `宋の妙禅師が籠もった天目山の張公洞・死関や梁の法雲法師の籠もった石室を見る思いであった
- `木啄も 庵は破らず 夏木立
- `と、とりあえず一句を柱に残した