一一 白河の関
現代語訳
- `心の整理がつかない日々を重ねるままに白河の関まで来て、ようやく旅する心が定まった
- `たよりあらば いかで都へ 告げやらん 今日白河の 関は越えぬと
- `と、平兼盛が関越えの思いを伝えたかったのも道理である
- `とりわけこの関は奥羽三関の一つで、風流を好む人の心を惹きつけてきた
- `能因法師の歌都をば 霞と共に 立ちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関などに詠まれた秋風は耳に余韻を残し、平親宗の歌紅葉ばの 皆紅に 散り敷けば 名のみなりけり 白河の関などに詠まれた紅葉は秋の記憶を蘇らせ、源頼政の歌都には まだ青葉にて 見しかども 紅葉散り敷く 白河の関などに詠まれた青葉は今なお梢の美しさを際立たせている
- `藤原季通の歌見て過ぐる 人しなければ 卯の花の 咲ける垣根や 白河の関などに詠まれた卯の花の白さに今は茨の花が白く咲き添って、久我通光の歌白河の 関の秋とは 聞きしかど 初雪分くる 山のべの道などに詠まれた雪の白さにも勝るように思える
- `平安の昔の、能因法師の歌に感服した竹田大夫国行という人が陸奥守として下向の折にこの関で冠を正し衣裳を改めたことなどを、藤原清輔が袋草紙に書き留めているという
- `卯の花を かざしに関の 晴着かな
- `曾良