一四 信夫の里
現代語訳
- `夜が明けると、源融の詠んだみちのくの しのぶもぢ摺り 誰故に 乱れんと思ふ 我ならなくにの信夫文知摺の石を訪ねて、信夫の里に行った
- `遥か山陰の小さな里に、石は半ば土に埋もれていた
- `里の子供たちがやって来て教えてくれた
- `昔はこの山の上にあったのですが、往き来する人が麦草を取っては、この石に擦ったら言伝えどおり恋しい人の面影が現れるかを試すので、怒った村の人がこの谷に突き落としたら、石の面が下になってしまったのです
- `と言う
- `そんなことがあるのだろうか
- `早苗取る 手許や昔 信夫摺