現代語訳
- `早朝、奥州一の宮・塩釜神社に参詣した
- `国守・伊達政宗公が再興なさったもので、宮柱は太く、彩られた垂木はきらびやか、石段は極めて高く重なり、朝日が朱色の斎垣を輝かせている
- `都からこんなに遠く離れた辺境の地でも、神霊はあらたかに在す、これぞ我が国の風俗だ
- `と、とても尊く思われた
- `神前に古い灯明がある
- `鉄の扉の表面に
- `文治三年、和泉三郎寄進
- `とある
- `五百年前の面影が今眼前に浮かんで、ある感情がわけもなく沸いてきた
- `彼・藤原和泉三郎忠衡は、勇義忠孝の武士である
- `父・秀衡の言葉を守って義経を守りぬこうとした、その誉れ高き名は今に至っても敬慕せぬ者はない
- `まさに韓愈の
- `人よく道を勤め、義を守るべし
- `名声はそれについてくる
- `という言葉どおりである