二二 塩釜

現代語訳

  1. `早朝、奥州一の宮・塩釜神社に参詣した
  2. `国守・伊達政宗公が再興なさったもので、宮柱は太く、彩られた垂木はきらびやか、石段は極めて高く重なり、朝日が朱色の斎垣を輝かせている
  3. `都からこんなに遠く離れた辺境の地でも、神霊はあらたかにす、これぞ我が国の風俗だ
  4. `と、とても尊く思われた
  5. `神前に古い灯明がある
  6. `鉄の扉の表面に
  7. `文治三年、和泉三郎寄進
  8. `とある
  9. `五百年前の面影が今眼前に浮かんで、ある感情がわけもなく沸いてきた
  10. `・藤原和泉三郎忠衡は、勇義忠孝の武士である
  11. `父・秀衡の言葉を守って義経を守りぬこうとした、その誉れ高き名は今に至っても敬慕せぬ者はない
  12. `まさに韓愈の
  13. `人よく道を勤め、義を守るべし
  14. `名声はそれについてくる
  15. `という言葉どおりである