現代語訳
- `黒部四十八か瀬
- `と言われるくらい無数の川を渡って大伴家持の歌港風 寒く吹くらし 奈呉の江 に妻呼び交はし 鶴多に鳴くなどに詠まれた歌枕・那古という浦に出た
- `内蔵忌寸縄麻呂の歌多胡の浦の 底さへにほふ 藤波を かざして行かん 見ぬ人のためなどに詠まれた担籠の藤浪は、春ではなくとも、初秋の情趣があろうから訪ねてみたい
- `と人に尋ねると、
- `ここから五里海伝いに行くと、向こうの山陰に入ったところにあるが、漁夫の小屋もほとんどないから、一夜の宿を貸す者はないだろう
- `と言い脅かされて、大伴家持の歌かからむと かねて知りせば 越の海の 荒礒の波も 見せましものをなどに詠まれた海伝いに加賀国に入った
- `早稲の香や 分け入る右は 有磯海