四一 汐越の松・天竜寺・永平寺
現代語訳
- `越前との国境、吉崎の入江を舟で渡り、汐越の松を訪ねた
- `夜もすがら 嵐に波を運ばせて 月を垂れたる 汐越の松
- `蓮如
- `この一首にていくつもの風景を詠み尽くしている
- `もし一言付け加えるとしたら、無用な指を増やすようなものである
- `松岡の天竜寺の住職・智栄和尚は古い知り合いなので訪ねて行った
- `また金沢の刃研師・立花北枝という者が、ちょっとそこまでと見送りに出て、ここまでついてきてしまった
- `所々の風景を見過ごすことなく句を案じ、折々見事な作を聞かせてくれた
- `今、別れの時に臨んで
- `物書きて 扇引き裂く なごりかな
- `五十町ほど山に入って永平寺を礼拝する
- `道元禅師の御寺である
- `詩経に曰く邦畿千里は惟民の止まる所と、都に近い地を遥か遠くに避けて、このような山陰に寺を建てたのも、宋国での師・如浄禅師が越州生まれであったことから越の国によすがを感じていたとか、貴い理由があるということである