素龍書 跋
現代語訳
- `枯寂なのも、艶やかなのも、逞しいのも、儚いのも、
- `奥の細道
- `を読み進めてゆくと、思わず立って手を叩き、伏して臓物を刻むほどに感動する
- `一方では蓑を着て
- `こんな旅をしてみたい
- `と思い立ち、一方では、座して眼前に奇景を見た気になって心満ちてしまう
- `こうしてたくさんの旅情に人を誘い、南海に棲むという人魚・鮫人の目から零れる涙は玉を成すがごとく、彼の筆は珠玉の文章を綴った
- `旅の成せる業である
- `器量の成せる業である
- `ただ嘆かわしいのは、このような人物が、実に弱々しくて、眉が白くなっていることである
- `元禄七年初夏
- `柏木素龍書