三六

原文

  1. `猿の経立御犬経立は恐ろしきものなり
  2. `御犬とは狼のことなり
  3. `山口の村に近き二ツ石山は岩山なり
  1. `ある雨の日、小学校より帰る子ども此山を見るに、処々の岩の上に御犬うづくまりてあり
  2. `やがて首を下より押上ぐるやうにしてかはるがはる吠えたり
  3. `正面より見れば生れ立ての馬の子ほどに見ゆ
  4. `後から見れば存外小さしと云へり
  1. `御犬のうなる声ほど物凄く恐ろしきものは無し