原文 `佐々木君幼き頃、祖父と二人にて山より帰りしに、村に近き谷川の岸の上に、大なる鹿の倒れてあるを見たり `横腹は破れ、殺されて間も無きにや、そこよりはまだ湯気立てり `祖父の曰く、 `これは狼が食ひたるなり `此皮ほしけれども御犬は必ずどこか此近所に隠れて見てをるに相違なければ、取ることが出来ぬ `と云へり