原文 `六角牛の峰続きにて、橋野一と云ふ村の上なる山に金坑あり `この鉱山の為に炭を焼きて生計とする者、これも笛の上手にて、ある日昼の間小屋に居り、仰向に寝転びて笛を吹きてありしに、小屋の口なる垂菰をかかぐる者あり `驚きて見れば猿の経立なり `恐ろしくて起き直りたれば、おもむろに彼方へ走り行きぬ