原文 `山には様々の鳥住めど、最も寂しき声の鳥はオツト鳥なり `夏の夜中に啼く `浜の大槌より駄賃付の者など峠を越え来れば、遥に谷底にて其声を聞くと云へり `昔ある長者の娘あり `又ある長者の男の子と親しみ、山に行きて遊びしに、男見えずなりたり `夕暮になり夜になるまで探しあるきしが、之を見つくることを得ずして、終に此鳥になりたりと云ふ `オツトーン、オツトーン `と云ふは夫のことなり `末の方かすれてあはれなる鳴声なり