五三 色々の鳥
原文
- `郭公と時鳥とは昔有りし姉妹なり
- `郭公は姉なるがある時芋一を掘りて焼き、そのまはりの堅き所を自ら食ひ、中の軟かなる所を妹に与へたりしを、妹は
- `姉の食ふ分は一層旨かるべし
- `と想ひて、庖丁にてその姉を殺せしに、忽ちに鳥となり、
- `ガンコ、ガンコ
- `と啼きて飛び去りぬ
- `ガンコは方言にて堅い所と云ふことなり
- `妹
- `さてはよき所をのみおのれに呉れしなりけり
- `と思ひ、悔恨に堪へず、やがて又これも鳥になりて
- `庖丁かけた
- `と啼きたりと云ふ
- `遠野にては時鳥のことを庖丁かけと呼ぶ
- `盛岡辺にては時鳥は
- `どちやへ飛んでた
- `と啼くと云ふ