五六河童

原文

  1. `上郷村の何某の家にても河童らしき物の子を産みたることあり
  2. `確なる証とては無けれど、身内真赤にして口大きく、まことにいやな子なりき
  3. `忌はしければ棄てんとて之を携へて道ちがへに持ち行き、そこに置きて一間ばかりも離れたりしが、ふと思ひ直し、
  4. `惜しきものなり、売りて見せ物にせば金になるべきに
  5. `とて立帰りたるに、早取り隠されて見えざりきと云ふ

注釈

`道ちがへは道の二つに別るる所即ち追分なり