六〇

原文

  1. `和野村の嘉兵衛爺、雉子小屋に入りて雉子を待ちしに狐出でて雉子を追ふ
  2. `あまりければ之を撃たんと思ひ狙ひたるに、狐は此方を向きて何とも無げなる顔してあり
  3. `さて引金を引きたれども火移らず
  4. `胸騒ぎして銃を検せしに、筒口より手元の処までいつの間にか悉く土をつめてありたり