原文 `栃内村の字琴畑は深山の沢に在り、家の数は五軒ばかり、小烏瀬川の支流の水上なり `此より栃内の民居まで二里を隔つ `琴畑の入口に塚あり `塚の上には木の座像あり `およそ人の大きさにて、以前は堂の中に在りしが、今は雨ざらし也 `これをカクラサマと云ふ `村の子供之を玩物にし、引き出して川へ投げ入れ又路上を引きずりなどする故に、今は鼻も口も見えぬやうになれり `或は子供を叱り戒めて之を制止する者あれば、却りて祟を受け病むことありと云へり