一〇四小正月の行事

原文

  1. `小正月の晩には行事甚だ多し
  2. `月見と云ふは六つの胡桃の実を十二に割り一時に炉の火にくべて一時に之を引上げ、一列にして右より正月二月と数ふるに、満月の夜晴なるべき月にはいつまでも赤く、曇るべき月にはに黒くなり、風ある月には
  3. `フーフー
  4. `と音をたてて火が振ふなり
  5. `何遍繰返しても同じことなり
  6. `村中れの家にても同じ結果を得るは妙なり
  7. `翌日は此事を語り合ひ、例へば八月の十五夜風とあらば、其歳の稲の刈入を急ぐなり

注釈

`五穀の占、月の占多少のヴリエテを以て諸国に行なはる。陰陽道に出でしものならん