一一二 蝦夷の跡
原文
- `ダンノハナは昔館の有りし時代に囚人を斬りし場所なるべしと云ふ
- `地形は山口のも土淵飯豊のも略同様にて、村境の岡の上なり
- `仙台にも此地名あり
- `山口のダンノハナは大洞へ越ゆる丘の上にて館址よりの続きなり
- `蓮台野は之と山口の民居を隔てて相対す一
- `蓮台野の四方はすべて沢なり
- `東は即ちダンノハナとの間の低地、南の方を星谷二と云ふ
- `此所には蝦夷屋敷と云ふ四角に凹みたる所多く有り
- `其跡極めて明白なり
- `あまた石器を出す
- `石器土器の出る処山口に二ケ所あり
- `他の一は小字をホウリヤウと云ふ
- `ここの土器と蓮台野の土器とは様式全然殊なり
- `後者のは技巧聊かも無く、ホウリヤウ三のは模様なども巧なり
- `埴輪もここより出づ
- `又石斧石刀の類も出づ
- `蓮台野には蝦夷銭とて土にて銭の形をしたる径二寸ほどの物多く出づ
- `是には単純なる渦紋などの模様あり
- `字ホウリヤウには丸玉・管玉も出づ
- `ここの石器は精巧にて石の質も一致したるに、蓮台野のは原料色々なり
- `ホウリヤウの方は何の跡と云ふことも無く、狭き一町歩ほどの場所なり
- `星谷は底の方今は田となれり
- `蝦夷屋敷は此両側に連りてありし也と云ふ
- `此あたりに掘れば祟ありと云ふ場所二ケ所ほどあり