一一三塚と森と

原文

  1. `和野にジヤウヅカ森と云ふ所あり
  2. `象を埋めし場所なりと云へり
  3. `此処だけには地震なしとて、近辺にては
  4. `地震の折はジヤウヅカ森へ遁げよ
  5. `と昔より言ひ伝へたり
  6. `此は確かに人を埋めたる墓なり
  7. `塚のめぐりには堀あり
  8. `塚の上には石あり
  9. `之を掘れば祟ありと云ふ

注釈

`ジヤウヅカは定塚、庄塚または塩塚などとかきて諸国にあまたあり。是も境の神を祀りし所にて地獄のシヤウヅカの奪衣婆の話などと関係あること石神問答にせり。又象坪などの象頭神とも関係あれば象の伝説は由なきに非ず、塚を森と云ふことも東国のなり