現代語訳
- `山口村の吉兵衛一という家の主人、根子立という山に入り、笹を刈って束にし、担いで立ち上がろうとするとき、笹原の上を風が吹き渡るのに気づいて見れば、奥の方の林の中から、幼子をおぶった若い女が笹原の上を歩いてこちらへやって来る
- `なんとも艶やかな女で、これも長い黒髪を垂れていた
- `子を結った負い紐は藤の蔓で、着ている衣類はよくある縞物だが、裾のあたりのぼろぼろに破れたところへさまざまな木の葉などを当てて繕っていた
- `足は地に着いているようにも思えない
- `事もなげにこちらに近づき、男のすぐ前を通ってどこかへ去っていった
- `この人は、そのときの怖ろしさから煩いはじめ、久しく病んでいたが、最近死んでしまった