現代語訳
- `ザシキワラシはまた女の子のことがある
- `同じ山口の旧家・山口孫左衛門という家には、童女の神が二人在すことが久しく言い伝えられていたが、ある年、同じ村の何某という男が町から帰るとき、梁のある橋のほとりで見慣れぬ二人のかわいい娘に会った
- `なんとなく憂わしい様子でこちらへ来る
- `お前たちはどこから来た
- `と問えば、
- `おら山口の孫左衛門のところから来た
- `と答える
- `これからどこへ行くのか
- `と聞けば、
- `どこそこ村の何某の家に
- `と答える
- `その何某は、やや離れた村にある今も立派な暮らしの豪農である
- `さては孫左衛門の世も末だな
- `と思ったが、それからあまり時を経ずして、この家の主従・二十数人、茸の毒に中たって一日のうちに死に絶え、七歳の女の子ひとりを残したが、その女もまた年老いて子がなく、近頃病で死んだ