現代語訳
- `また同じ人、ある夜、山中で小屋を作る暇がなく、とある大木の下に寄り、魔除けのサンヅ縄を自分と木のまわりに三周引きめぐらし、鉄砲を縦に抱えてまどろんでいたところ、夜深く、物音のするのに気づけば、大きな僧の姿をした者が赤い衣を羽根のように羽ばたかせて、その木の梢に覆いかかった
- `それっ、と銃を撃ち放てば、やがてまた羽ばたきして中空を飛び去っていった
- `このときの恐ろしさも尋常ではなかった
- `前後三度までこのような不思議に遭遇し、そのたびに鉄砲を止めようと心に誓い、氏神に願かけなどしたが、やがて再び思い返して、年老いるまで猟人の生業を捨てることはできなかったとよく人に語っていた