現代語訳
- `六・七年前、この村から栃内村の山崎の某婦の家に娘の婿を取った
- `この婿、実家に行こうとして山道に迷い、またこのマヨイガに行き当たった
- `家の有様、牛・馬・鶏の多いこと、花の紅白に咲いていたことなど、すべて前の話の通りである
- `同じく玄関に入ってみると、膳・椀を取り出した部屋があった
- `座敷に鉄瓶の湯が沸き立ち、今まさに茶を煎れんとするところのように見え、どこか便所などのあたりに人が立っているようにも思われた
- `茫然として、後にはだんだん恐ろしくなり、引き返して、そうして小国の村里に出た
- `小国では、この話を聞いて信じる者もなかったが、山崎の方では
- `それはマヨイガだろう、行って膳椀の類を持ち帰って長者になろう
- `と、婿殿を先に立てて、大勢でこれを探しに山の奥に入り、
- `ここに門があった
- `と言う場所に来たものの、目にする物もなく、むなしく帰ってきた
- `その婿も、ついに金持になったという話を聞かない