現代語訳 `栃内の字野崎に前川万吉という人がいた `二・三年前に三十余で亡くなった `この人も死ぬ二・三年前に夜遊びに出かけて帰ったとき、門の口から回って縁に沿い、その角まで来たとき、六月の月夜のこと、なんの気なしに雲壁を見れば、ぴたりとこれにくっついて寝ている男がいた `色の蒼ざめた顔であった `大いに驚いて病んだりしたが、これも何の前兆でもなかった `田尻氏の息子・丸吉がこの人と仲が良くて、これを聞いた