八七魂の行方

現代語訳

  1. `人の名は忘れたが、遠野の町の豪家で主人が大病をし、生死の境をさまよっていた頃、ある日ふと菩提寺を訪ねてきた
  2. `和尚が丁重ににあしらい、茶などを勧めた
  3. `世間話をして、やがて帰ろうとする様子に少々不審があったので、後から小僧を見に行かせると、門を出て家の方に向かい、町の角を曲がって見えなくなったという
  4. `その道でこの人に会った人はまだ他にもいる
  5. `誰にもよく挨拶して普段と変わらぬ様子であったが、この晩に死去して、もちろんその時は外出などすべき様態ではなかったという
  1. `後に寺では、茶は飲んだのかどうかと茶椀を置いたところを改めてみたところ、畳の敷き合わせに全部こぼしてあった