原文 `今は昔樵夫の山守に斧を取られて `わびし `心うし `と思ひて頬杖打衝きて居りける `山守見て `さるべき事を申せ `取らせん `と云ひければ `悪しきだになきはわりなき世の中によきを取られて我いかにせん `と詠みければ山守 `返しせん `と思ひて `ここここ `と呻吟きけれどえせざりけり `さて斧返し取らせてければ `嬉し `と思ひけりとぞ `人はただ歌をかまへて詠むべしと見えたり