原文 `これも今は昔範久阿闍梨といふ僧ありけり `山の楞厳院に住みけり `ひとへに極楽を願ふ `行住座臥西方を後にせず `唾大小便西に向はず `入日を背に負はず `西坂より山へ登る時は身をそばだてて歩む `常に曰く `仆るる事必ず傾く方にあり `心を西方に懸けんに何んぞ心ざしを遂げざらん `臨終正念疑はず `となん云ひける `往生伝に入るとか